いい人材を採用したいと思う経営者へ…やってはいけない◯◯採用のリスクとは?

「採用の間違いは教育では取り返せない」とは師匠:榎本計介氏の言葉。

研修を提供する身からすると、「いや!どんな人材も可能性は無限大です!」と答えたくなりますが、残念ながらそんなことはありません。

だからと言って「使えないやつばっかりだ」と言っているのは経営者としての能力の低さの証明です。「いろんな才能があって、たまたま自社では発揮できない」が真実。そして、面接では見えないことが採用した後から分かってくるというのもあるあるです。

とにかく正解がない世界。だからこそ不正解の排除をすれば確率が上がるのではないかと考え、今回は、「どんな採用をするべきか」ではなく「どんな採用をしてはいけないか」についてお伝えします。


大学卒業後、ヘルスケア業界で1000名以上のトレーナーを育成。 セールス下手でも日本の隅々にまで展開することに成功。 好きで得意なことで役に立つと自分も周りも幸せだ。と確信する。 その後、独立起業。インナーブランディングの専門家として活動中。 趣味はトライアスロンだが走るのは嫌い。サウナとバスケ観戦が好き。 焼肉の部位はハラミ。フラップスプランの代表。


なぜ人が定着しないのか?

サポートさせていただいている企業様で人材の悩みについて経営者から相談されます。

その中でも多いのが「人が定着しない」という悩み。

そしてこの悩みを抱えるサポート先を分析していくと大体2パターンに分かれます。

  1. そもそも給与、業務内容、能力が合ってない「条件による退職」
  2. 上記のマッチングはいいはずなのに定着しない「謎の退職」

1. については理由が明確なので今回は2. の会社のお話です。

2.待遇はいいのに定着しない「謎の退職」が連続する企業にかなりの確率で共通していることは

・業績が伸びている
・決して過酷な環境なわけではない
・社長が勉強熱心

ということです。

そして、定着しなくなったきっかけを遡ってみると

・主軸だったキーマンが退職した

という事象が起きていることが多くあります。

このキーマンの退職というは、決してネガティブな理由ではなく、独立起業や本人の夢が叶うようなキャリアアップ、結婚退職などこちらが応援したくなるような理由です。

その穴を埋めるように早急に採用に動くわけですが、ここが運命の分かれ道となります。

穴埋め採用クライシス

とある大箱の美容院の話です。

起業から5年いろんな困難はあったものの順調に拡大し、スタッフは15名ほど。さらに多店舗展開を目指そうと息巻く経営者。

しかし、ここで創業2年目から入社し主軸を担っていたリーダー格の女性スタッフが結婚退職することになりました。

結婚後も働いて欲しいと話し合いましたし、本人も働きたいと思っていたのですが、旦那さんの仕事の関係上、引っ越すことが前提だったためそれも不可能ということで、惜しまれつつ退職しました。

もちろん、社長はすぐにそのキーマンが抜ける穴を埋めるべく二番手のスタッフをリーダーに任命します。そしてその人員補充のために採用活動を行いました。

ここまでは何ら問題のない動きのように感じます。

しかし、この採用によってどんどん状況は悪化していったのです。

私は「穴埋め採用クライシス」と呼んでいますが、起きたのは大体以下のこと。

  1. 二番手がプレッシャーで機能不全
  2. 労働力としての採用で質が低下
  3. 社長が学んでコントロールしようとするため文化が変化
  4. その変化を敏感に感じた「理念体現者」が数人やめる
  5. ベテラン勢の「創業魂」が弱まり「新人へなちょこマインド」が台頭し始める
  6. この対立により社内の雰囲気が悪くなり採用してもすぐ辞めてしまう
  7. 2に戻る。以下無限ループ。

一つずつ解説していきます。

1.二番手がプレッシャーで機能不全

新たにリーダーになった人材が、以前のキーマンの幻影と戦ってしまうと多くの場合がプレッシャーで自己嫌悪に向かっていきます。また、経営者側もなんともそのキーマンが抜けた穴が大きいために、いつまでも以前のクオリティを期待してしまい無意識に「以前はこうだった」みたいなことを口走ってしまいます。すると徐々にその新リーダーのエネルギーは降下していき、より負のスパイラルに落ち込んでいきます。

2.労働力としての採用で質が低下

業績は好調なので人員補充が必要です。正直、猫の手も借りたいという状況のため、とにかく自社で働きたい!と言ってくれるなら、相当変な人でない限り、とりあえず採用する。という動きになってきます。しかし、まだ猫の方が可愛げがあって良かったということがよく起こります。現実問題として人材の質の低下が起きる瞬間です。

3.社長が学んでコントロールしようとするため文化が変化

しかし、この会社の社長は優秀なので評価制度や社内規則を整えることで、なんとかこの人材の質の低下によるサービスの低下を防ぎ、顧客満足を維持するための努力をしました。今まではお互いの配慮や思いやりの気持ちで動いていた部分がルール化されていきました。徐々に会社の文化が変化していったのです。

4.その変化を敏感に感じた「理念体現者」が数人やめる

私たちが好きだった会社ではなくなってしまった。初期メンバー数人がその変化を敏感に感じとります。なんだか人が入れ替わってきたし、そろそろ私も転職しようかな。そんな雰囲気になり会社としてとても重要な「理念体現者」が数人やめてしまいます。

5.ベテラン勢の「創業魂」が弱まり「新人へなちょこマインド」が台頭し始める

数人の理念体現者の退職により、今まで圧倒的多数派であった仕事楽しい!がんばろう派閥の影響力が下がり、新たな労働力として採用された新人の働く人の権利だけをやたら主張する派閥が台頭し始め、内紛が起き始めます。社長はもちろんがんばろう派なんですが「やめられたら困る」という恐れから反対派閥に強くアプローチできなくなっていきます。

6.この対立により社内の雰囲気が悪くなり採用してもすぐ辞めてしまう

この内紛状態にある職場で採用活動を行うわけですが、求職者も馬鹿じゃないので、というか、優秀な人ほど職場の雰囲気を感じ取って辞退します。逆に気づく力の弱い人だけが入社してきて「思ったのと違う」って言って早期に退職するわけです。

7.定着しないため2に戻る。以下無限ループ。

人がすぐやめて現場が困るため補充人員をすぐに採用。しかし、猫の方がまだマシ。

以下無限ループとなります。

この「穴埋め採用クライシス」いかがでしょうか?怖いですよね。

でも実際によく起きています。業種業態関係なく、実は目立たないけど要石のような動きをしていたまさに、文字通り「キーマン」が退職することによって、綻(ほころ)びが生じ始めます。

このキーマンの特徴は実務レベルが非常に高いというよりは、理念の体現者であったり、まとめ役という業務の表面上にあまり出てこない役割だったりします。

非公式のNo.2や精神的支柱と呼んでいいかも知れません。

なので、経営者側の見解は「やめるのは寂しいけど業務に支障は出ないだろう」というレベルの認識です。そのために穴埋め採用で何とかなると考えてしまうのかも知れません。

ではどのようにしたらこの無限ループから抜けられるのでしょうか。

穴埋め採用をやめるためにすべきこと

穴埋め採用クライシスの発端はどこにあるのか?

そして、どこで食い止めることができるのか?

以下のことに気をつける必要があります。

  1. 属人的な状態を防ぐ
  2. 前はよかったなと比較しない
  3. 労働力としての採用をやめる

属人的な状態を防ぐ

そもそもで言うと、キーマンが辞めて二番手が比較されてしまう状況を作らない。そして、新しい人が入ってきても個の能力に頼ることなく等しくできる状態を準備しておく。ということ。つまり属人的な仕事にならないように、業務に人をつけるという状態を平時から構築していくことが重要です。

と、机上の理論ではこうなりますが、ほとんどの中小企業では無理だと思います。その人だからここまでやれた。というのが真実だし、その人の退職に備えて準備するほど余裕がないことの方が大半です。とはいえ、属人的にならない状態づくりは「理想を求めて準備する」と理解して進めていく必要があると思います。

前はよかったなと比較しない

「なんで近くで見てたはずなのにできないんだろう?」

いまいち動きの悪い新リーダーに対してつい思っていませんか?

この問題は過去が美化されがちであることが理由の一つ。
そしてもう一つが、一番手と二番手の総合力の違いがいかに大きいのか?について正しく理解できている人が少ないことです。

高校野球の投手がなぜあんなに連投させられるのか?と疑問に思いませんか?

二番手投手に変わればいいのに。どこの高校も変えられないのです。

それは、あまりに一番手との総合力が違いすぎるから。

スキルの違いが最大の理由ではありません。メンタルも含めた総合力が圧倒的に違います。それは「本番」に立った回数が圧倒的に違うからです。

エースが1人しか存在し得ない理由。

それは本当に責任を持ったリーダーは常に1人だからです。

エースは登板回数が圧倒的に多く、失敗と成功を重ね、さらに真のエース、リーダーになっていきます。しかし、二番手はあくまでエースの控え、副リーダーであり、エースの有事に備えている存在です。その存在にエースと同等の心持ちで常に居なさい。というのは不可能に近い話です。

責任を背負った「時間」と「回数」
それだけが真のリーダーを育てます。

なので、いきなり同等の動きができるという期待は手放しましょう。じっくり育てるしかありません。

「前の人はできてた、前が良かった」って彼氏、彼女に言われたら嫌でしょう?

従業員はもっと嫌ですよ。

労働力としての採用をやめる

これが定着しない職場問題のボトルネックだと思います。

もちろん採用にあたっては慎重に実施されている経営者がほとんど。

しかし、現場の過負荷をなんとか解消したいという思いから、つい採用基準が甘くなったりすることがあります。

また、そもそも応募数の少ない業界だったりすると採用費分は採用しなきゃもったいない。来てくれるだけでありがたい!となって、来るもの拒まず去るものは必死で引き止める。となってしまっているのも現実です。

苦しい状況から逃れたいという欲求は、目を曇らせます。

この現象を「認知の変容」と言います。

高層ビル火災において、絶対に助からない高さから飛び降りてしまう人が多くいるそうです。従来は、ここにいても煙や火に撒かれて死んでしまうから覚悟を決めて飛び降りるのだと考えられていました。

しかし、とあるホテル火災から救出された女性宿泊客の証言は、飛び降りの背景に認知の変容が絡んでいることを明らかにしました。

この女性は数人ではしご車による救助を待ちながら、5階の窓から交代で首を突き出して新鮮な空気を呼吸していました。すると、首を突き出す度に、眼下に見えるホテルの庭が近付いて見えてきたといいます。そのうち「この近さなら何とか飛び降りられるのではないか」という気がしてきて、理性ではそれを否定しながらも、その気持ちを抑えることが難しかったそうです。これは、脱出したい、助かりたいという強い欲求によって、地面までの距離感が歪められた例であるといえます。

このように、私たちは危機が迫ると現実を歪めて「良く」みてしまうということが起きます。その良く見たいという思い込みに、確証バイアスという、自分に都合の良い情報ばかりを集める。という機能が拍車をかけて、本当はイマイチな人材を「ものすごくいい」と思い込んでしまうのです。

採用に正解はないが不正解はある

とにかく採用というか、人が人を判断するということはどこまでいっても難しいということです。

期待度×合否の結果の掛け算は以下の通り。

・ダメだと思って不採用にしたら本当にダメな人だった
・ダメだと思って不採用にしたら実はいい人でもったいなかった
・あまり良くないと思ったけど採用したら、やっぱりダメだった
・あまり良くないと思ったけど採用したら、実は良かった
・いいと思って採用したのに、ダメだった
・いいと思って採用したら、やっぱり良かった

とどのつまり。結果は雇ってみなけりゃわからない。というのも真実です。

しかし、この6つの目のサイコロの中で

・あまり良くないと思ったけど採用したら、実は良かった

の目が出る確率はどれぐらいでしょうか。

雇用側も被雇用側も双方がハッピーになる採用方法はわかりません。

しかし、双方が不幸にならないために雇用側ができることがあるとするなら、自社で働きたい人ではなく、自社で働いてほしい人を獲る。ということに尽きます。

「そうは言っても、現場が回らない」

経営者から2万回ぐらい聞きましたが、結局ほとんどの会社がその時期に採った人材はほぼ辞めていて、入れ替わっています。

自社が自信を持って雇用した人しか本気で関わることができません。

穴埋め採用はグッと堪えて、自社に必要な人を採用しましょう。

強いチームづくりのヒントになれば幸いです。

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