これからの企業において、ビジネス環境の急激な変化や後継者不足、意思決定・実行の必要性などの理由から、次世代の経営幹部の育成は必要不可欠だと言えます。
ただし、経営幹部の育成を実際に考える場合、どのように行えばいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
具体的に検討する際は、企業の事例を参考にすることで進めやすくなります。
今回の記事では、次世代リーダーの育成に積極的に取り組み、その成果が出ている企業の事例を3つ紹介します。
サントリーホールディングス株式会社の事例
サントリーは、グローバル企業として多くのM&Aを成功させています。
その中で、「One Suntory」の実現を目指し、次の時代を担う経営人材の発掘と育成に注力中です。
主な実施例としては、下記の3つが挙げられます。
- リーダーシップ・コンピテンシー
- グループタレントレビュー会議
- サントリー大学
それぞれ解説します。
リーダーシップ・コンピテンシー
グローバル人材の必要性が加速する中、サントリーではグループ全体を先導するリーダーに向けて「リーダーシップ・コンピテンシー」を策定しました。
これに反映されているのが、創業精神に沿った「サントリーらしさ」です。
グローバルな環境においても、サントリーのカルチャーを大事にしながら活躍できる人材を育成するための取り組みの一つとなっています。
グループタレントレビュー会議
次世代リーダーを見つけるという点では、「グループタレントレビュー会議」を開催することで経営人材の発掘に取り組んでいます。
この会議によってグループ各社の人材情報を共有し、後継者育成計画や適切な人材配置に活用できるようになっているのが特徴です。
また、それに伴う育成プランも実行中です。
サントリー大学
サントリーは、グローバルに活躍できる人材を育てるため、2015年に「サントリー大学」を開校しました。
ここでは、“やってみなはれ”と“利益三分主義”というサントリーの創業精神への共感が進むような学習プログラムを展開しています。
また、米国のトップ大学と独自のプログラム開発を行い、ケースステディで学べる環境も提供中です。
「高い目標を立てて失敗も許容する」「アイデアを促進してそれをサポートする」といったサントリーならではの環境の中で、国境を越えた次世代リーダー候補を育成し、次々に輩出することに成功しています。
株式会社商船三井の事例
株式会社商船三井は、1884年に大阪商船として誕生して以来、130年余の歴史を有する世界最大級の総合海運企業です。
世界の資源を輸送する海運業を中心としたグローバルな事業展開を図っており、多彩な周辺事業の運営でも有名です。
主な実施例として次の3つが挙げられます。
- MOL CHART
- One MOL グローバル経営塾
- グローバル人材育成プログラム
それぞれ解説します。
MOL CHART
株式会社商船三井グループは、3つの企業理念と長期ビジョンを掲げ、グループ全社員の行動指針として「MOL CHART」を制定しています。
「CHART」とは、「Challenge」「Honesty」「Accountability」「Reliability」「Teamwork」という5つの価値観の頭文字であり、社員が向かうべき方向として「海図」の意味も込められているのが特徴です。
「MOL CHART」では、「自律自責型の人材」を育成することを目指しており、そのため、「リーダーシップ」「コミュニケーション力」「ファイティングスピリット」「タフネス」という4つの素養を重視し、異文化や語学に関する教育も実施しています。
One MOL グローバル経営塾
「One MOL グローバル経営塾」は、2014年度から開始された社内スクールで、グローバルな環境でマネジメント力やビジョンを描けるスキルやマインドセットを学ぶことを目的としています。
対象者は、同社および海外現地法人の各部門から推薦された次世代を担う人材です。
期間は約1カ月半おきに5日程度ずつ日本で開催され、3回に分けて行われます。
プログラムは、イノベーティブな思考法やリーダーシップなどのフレームワークを学んだ後、小グループで「10年後の商船三井を創造する」というテーマに沿ってアクションラーニングを行い、最終日には経営陣に対し提言をプレゼンテーションするという内容です。
役員をメンターとするなど、受講生が一人ひとりの個性・ビジョンを発揮できるように工夫されたプログラムとなっています。
グローバル人材育成プログラム
経営塾への参加候補前の若手社員に向けては、35歳前後の国内グループの管理職層を対象にさまざまな人材育成プログラムを実施しています。
語学講座や海外赴任予定者への研修、経営リテラシーを学ぶ「経営スクール」などを通じて、グローバル人材としての育成を図ります。
日本電気株式会社(NEC)の事例
日本電気株式会社(NEC)は、1899年に米国の通信機器製造会社との合弁によって創業された、日本初の外資との合弁企業です。
コンピュータ技術とコミュニケーション技術の融合を意味する「C&C」という理念を通し、電話から始まり、通信、半導体、コンピュータへと事業を展開してきました。
日本電気株式会社では、グループ社員の普遍的な価値観として「NECグループバリュー」を作成し、これをベースに「人財哲学」を制定しています。
2016年からは、「人材哲学」を基にした「NEC 社会価値創造塾」を創設することで、次世代リーダー育成に取り組んでいます。
「NEC 社会価値創造塾」のプログラムは、下記の4つのモジュールが基本です。
- 共創学習
- 現地学習(ラーニング・ジャーニー)
- 内省学習
- NEC変革プロジェクト
中でも特に大きな特徴となっているのが、「現地学習(ラーニング・ジャーニー)」です。
この学習には、フィリピンやザンビアへの訪問、また日本での介護実習や地方拠点への訪問を通して、自らの視点を広げる目的があります。
まとめ
今回は、次世代リーダー育成に役立つ主な3つの企業事例を取り上げて紹介しました。
企業によってリーダーの育成方法は異なりますが、いずれにおいても、「企業理念」を基にした取り組みになっていることがわかります。
次世代リーダーの育成を検討する場合、自社の企業理念をあらためて確認しておくことが重要です。
ぜひ、これらの事例を参考にして、次世代の経営幹部育成に取り組んでみてください。