「マトリクス組織」は、複数の組織軸を組み合わせて専門性と連携を両立させる組織形態です。
自社へのマトリクス組織の導入を検討する場合、メリット・デメリットやポイントを知っておきたいという方も多いのではないでしょうか。
概要や種類を紹介した前回に続き、今回の記事ではマトリクス組織のメリット・デメリット、取り入れた際に成功させるポイントについて解説します。
ぜひ、参考にしてみてください。
マトリクス組織のメリット
マトリクス組織のメリットは、次の3点です。
- 業務効率化が図れる
- 管理者の負担が軽減される
- 新たな事業に取り組みやすい
それぞれ解説します。
業務効率化が図れる
マトリクス組織では部門間の壁を越えたコミュニケーションが促進し、組織全体の視点から業務を進められるのがメリットです。
また、各部署の専門知識やノウハウが共有されることで重複業務が削減されるため、工程の最適化が実現します。
人材を柔軟に配置できるので業務の繁閑に応じた人員調整が容易になり、組織全体の生産性向上にも役立ちます。
管理者の負担が軽減される
権限と責任がプロジェクトや機能ごとに分散されるため、トップ管理者への業務集中が緩和される点もメリットの一つです。
現場に近いマネージャーに意思決定権が委譲されることで迅速な判断が可能になり、各管理者は自分の専門分野に集中できます。
これにより管理の質が向上すると同時に、管理者のストレスや疲労も軽減されます。
新たな事業に取り組みやすい
各部門から必要な専門知識や技術を持つ人材を集めてチームを編成するため、新規事業や市場変化への対応がスムーズに進みます。
多様な視点を持つメンバーが集まることで創造的なアイデアが生まれやすく、既存リソースを新たな形で組み合わせてコスト効率の良い事業展開が可能になります。
マトリクス組織のデメリット
メリットがある一方で、マトリクス組織には特有の課題も存在します。
主なデメリットは次の3つです。
- パワーバランスが維持しにくい
- 従業員の負担が増える
- 人事評価が難しくなる
それぞれ解説します。
パワーバランスが維持しにくい
各部門の管理者とプロジェクトマネージャーという複数の指揮系統が存在するため、権限のバランス維持が難しくなる傾向があります。
管理者間で方針や優先順位の食い違いが生じると、メンバーは相反する指示に板挟みになり業務が停滞します。
この問題を防ぐには、明確なルール設定と定期的な調整会議が欠かせません。
従業員の負担が増える
複数の管理者から指示を受けることで、従業員の心理的負担が増大するのもデメリットの一つです。
異なる期待に応えようとするストレスや複数プロジェクトの同時進行による時間管理の難しさによって、バーンアウトを招くおそれがあります。
また、報告や会議の増加により実務時間が減少するリスクもあります。
適切な業務量調整と優先順位付けが重要です。
人事評価が難しくなる
部門管理者とプロジェクトマネージャーでは評価基準が異なることが多く、評価の不一致が生じやすくなります。
また、プロジェクト期間と評価期間の不一致や貢献度の可視化の難しさも課題です。
複数評価者による総合的な評価システムと明確な評価指標が必要になります。
マトリクス組織を取り入れて成功させるポイント
マトリクス組織を取り入れて成功させるには、次の2つのポイントを押さえておくとよいです。
- 管理者・マネージャーの連携を強化する
- 従業員のストレスケアに努める
それぞれ解説します。
管理者・マネージャーの連携を強化する
マトリクス組織では複数の管理者・マネージャーから指示が出るため、指示の不一致や矛盾が生じやすくなります。
これを防ぐには、お互いの定期的な情報共有と意思疎通が必要です。
また、プロジェクトごとに役割と責任を明確にし、指示系統の混乱を未然に防ぐことが重要です。
共通の目標設定や評価基準の統一を図り、協力体制を構築することで、マトリクス組織の強みを発揮できます。
従業員のストレスケアに努める
マトリクス組織の従業員は複数のプロジェクトに所属することで、多方面への気遣いやタスク管理の複雑さから大きなストレスを抱えがちです。
業務量の偏りも生じやすいため、各従業員の業務状況を定期的に把握し、過度な負担がかからないよう調整することが重要です。
ストレスチェックやセルフケア研修の実施も効果的です。
また、コーピングなどのストレス対処法を教育し、従業員自身がストレスを軽減できる環境づくりをサポートすることで、マトリクス組織の持続可能な運営が可能になります。
まとめ
マトリクス組織には業務効率化や新規事業への柔軟な対応などのメリットがある一方、パワーバランスの維持の難しさや従業員の負担増加といった課題もあります。
導入する際は、管理者間の連携強化と従業員のストレスケアがポイントになります。
今回の記事を参考に、マトリクス組織の強みを生かした柔軟な組織づくりを目指していきましょう。