新入社員などが、入社前に仕事に対して抱いていた理想と入社後の現実とのギャップに戸惑う状態を、リアリティショックと言います。
リアリティショックについてだいたい理解できているものの、「詳しい事例が知りたい」「発生した場合、どのように対応すべきか具体例を教えてほしい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、リアリティショックが起こった企業の事例と、その対応について紹介します。
リアリティショックの実際の例や企業が行っている事例を知りたい企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
リアリティショックについておさらい
「リアリティショック」とは、入社前に抱いていた仕事への理想と実際に入社してからの現実との間にギャップがあることで、強いストレスや失望を感じる現象です。
特に入社後や異動・昇進後、復職後といった環境が変わるタイミングで起こりやすく、仕事内容や人間関係など、さまざまな原因が考えられます。
また、リアリティショックが発生することで離職率の増加や生産性の低下、社内の雰囲気の悪化などにつながります。
社員個人だけでなく、会社全体にも影響が及ぶため、放置せずにしっかり対応していくことが重要です。
リアリティショックが起こった企業の事例
ここからは、リアリティショックが起こった企業の事例を2つ取り上げて解説します。
株式会社オールハーツ・カンパニーの事例
株式会社オールハーツ・カンパニーは、世界一のベーカリー&パティスリーカンパニーを目指して2002年に設立された企業です。
同社の代表的なブランドには、マジカルチョコリングで知られる『Heart Bread ANTIQUE』や、人気のなめらかプリン『パステル』があります。
小さなベーカリーからスタートした同社は、現在では150店舗を超えるなどの急成長を遂げています。
創業当初から会社の理念や想いを変わらず大切にしているほか、取り組みを続けているのがリアリティショック対策です。
同社は「世界に一人のあなたと一緒に働きたい」という採用ポリシーを掲げており、この理念に共感して入社した新入社員が入社後にギャップを感じることがないよう、「100日日報」の制度を導入しました。
「100日日報」は、新入社員が入社後100日間、毎日上司に日報を提出する制度です。
これにより、価値観のすり合わせや不安の軽減を図るのが大きな特徴で、実際に「みんなで100日日報を見てもらっている安心感がある」との声もあり、好評だそうです。
さらに、日報提出率と自己評価でグラフを作成し、社員一人ひとりの離職予測を行うことで早期のケアにつなげています。
この取り組みは、複数店舗を運営する中で経営と店舗、また店舗同士のつながりが希薄になっているという課題に対応するものでもあるということです。
このような施策により、同社は新入社員のリアリティショックを軽減し、会社への帰属意識を高める努力を続けています。
株式会社ベイシアの事例
株式会社ベイシアは、東日本を中心に福島県から滋賀県まで広域でスーパーマーケットを展開する企業です。
小売業界では離職率が高いという課題があります。
同社ではこの課題に対応するため、以前から集合研修や合宿研修、従業員同士の交流を深めるイベントを数多く開催してきました。
しかし、コロナ禍の影響で研修やイベントを中止せざるを得なくなった結果、新入社員とのコミュニケーション不足が起こりました。
さらに、精神的に追い詰められて長期欠勤する社員が散見されるようになったのです。
また、「同期の顔が見えない」という不安の声も多く聞かれたとのことです。
この状況に対処するため、ベイシアでは下記のような新たなコミュニケーション施策を導入しました。
- オンラインツールを活用したコミュニケーション促進
- アプリ上での自己紹介の奨励
- 教育スタッフによる従業員へのメッセージカード送付
これらの施策を通じて、コロナ禍においても新入社員の孤独感を解消し、安心して働ける環境づくりに努めています。
同社の事例は、急激な環境変化に直面しながらも、社員の仕事への意欲を維持・向上させるための創意工夫を示していると言えます。
まとめ
理想と現実のギャップによって生じる「リアリティショック」は、離職率の増加や生産性の低下につながる重要な問題です。
この課題に対し、株式会社オールハーツ・カンパニーは「100日日報」制度を通じて新入社員と上司のコミュニケーションを促進し、株式会社ベイシアはコロナ禍でのオンラインツールを活用した新たな施策を実施しています。
これらの事例は、環境変化に適応しながら社員の不安を解消し、仕事への意欲や帰属意識を高める取り組みを示しています。
今回の記事を参考にして、リアリティショックに積極的に対応し、社員の定着率向上や職場環境の改善につなげていきましょう。