2023.03.28
チームづくり
目次
近年、ビジネス環境のスピード化や効率化に伴い、企業を支える人材候補の確保・育成が重要な課題となっています。
今後の企業成長を目指し、自社の中で中核を担うような「コア人材」の育成を考えている方も多いのではないでしょうか。
この場合、コア人材とはどのような人材を指すのか、またどのような役割があるのかといった点をしっかり把握しておくことが重要です。
今回は、コア人材について紹介するとともに、その役割や育成するメリット、取り組みのポイントについても解説します。
「コア人材」とは、企業の中核を担い、組織において中心的な役割を果たす人材のことを指します。
コア人材は、知識やスキルが高いだけでなく、リーダーシップやコミュニケーション力、問題解決能力など、組織運営に不可欠な能力を兼ね備えている点が特徴です。
企業のビジョンや目標に対して主体的に取り組み、周囲を巻き込んで業績向上に貢献することが求められる、高レベルの人材と言うこともできます。
コア人材には、それぞれの企業によってさまざまな役割があります。
ここでは、企業の成長プロセスに沿ったコア人材の一般的な役割を紹介していきます。
企業が立ち上がったばかりの時期は、枠組みがほとんど整備されていない状態です。
そのため、経営トップのもとで社員全員が経営的視点を持って働くことが求められます。
どんなことでも主体的に取り組み、自分で考えて行動できることがコア人材の役割になります。
事業が急速に拡大し、売上や利益が大幅に増加する成長期は、業務の進め方も標準化・システム化が進み、さらなる拡大に向かっている段階です。
この時期では、組織の一員として周囲と連携しながら動くことがコア人材の役割です。
組織力の強化に貢献することが、成長期に求められる最も重要な資質と言えます。
競合の増加や市場の変化によって、既存の事業展開だけでは企業の成長に限界が来る可能性があります。
そのため、新規事業の立ち上げといった多角化を行うことで、収益の改善や新規市場への参入などが可能です。
この時期では、現状を正確に分析し、今後の進路を見極めることがコア人材の役割です。
事業を続ける上では、既存の枠組みをリセットして新しい枠組みを構築する必要も出てきます。
この段階においては、斬新なアイディアを積極的に提案したり、周囲を説得して巻き込んだりすることがコア人材の役割です。
変化や失敗を恐れないチャレンジ精神が求められると言えます。
コア人材の育成は、企業にさまざまなメリットがあります。
主なメリットは、下記の3つです。
それぞれ解説していきます。
企業を将来に渡って存続させるためには、計画的な幹部の育成が欠かせません。
幹部育成を実施する場合、その候補の筆頭となるのがコア人材です。
早い段階から組織の中核として活躍しているため、次世代の幹部候補に最も適した人材と言えます。
コア人材は、困難な問題が発生した場合でも速やかに動いて解決に導く能力を持っています。
また、必要に応じて周囲を巻き込んで解決を図ることも可能です。
そのため、事業運営に良い影響を与え、結果的に企業全体の生産性向上につながります。
優れたリーダーシップを持つコア人材は、企業の統率に貢献します。
統率がとれている企業では、社員が安心して自分の職務に専念することができます。
コア人材の活躍は、事業の安定化にも大きな効果をもたらすのです。
それでは、コア人材を育成するためにはどのような取り組みをする必要があるでしょうか。
取り組みのポイントとして、下記の3つが挙げられます。
それぞれ解説します。
コア人材候補を内部育成するにはOJTが基本ですが、教える役割の上司が忙しすぎて機能しなくなるということも多いかもしれません。
その場合、企業全体におけるOJTの整備が必要になります。
特に、経験豊富な先輩が若手社員のサポート役となり、業務知識やものの見方などを伝授する「メンター制度」の導入がおすすめです。
成果を目的とした教え方になりがちな上司に対し、メンター(指導役)は自身で行動するための土台となる部分も教えるのが特徴です。
メンター制度によって、コア人材になりうる社員に、仕事に対する満足感や活躍の実感を与えることができます。
また、コア人材になった時にメンターとして後輩に自ら学んだことを伝え、成長を促すことが可能です。
コア人材が持続的に成果を挙げるためには、適切な評価と相応の報酬が大変重要です。
コア人材になるような優秀な人材は、自分のやりがいや目的を達成できない企業に定着しません。
そのため、業績や貢献度に応じた評価システムを整え、インセンティブや昇進の機会を提供すると良いです。
コア人材に活躍してもらうためには、それを後押しするような企業文化を築く必要があります。
意見やアイディアが自由に発信できる風通しの良い環境を作り、失敗を恐れずに取り組めるチャレンジしやすい風土を固めることが重要です。
また、経営層との接触が多い企業にすることも大切なポイントです。
コア人材は、事業の中核を担い、組織において中心的な役割を果たす存在です。
次世代の幹部候補を確保するためにも、企業は早い段階でコア人材を見極め、適切な取り組みのもとで育成する必要があります。
ぜひ今回の記事を参考にして、コア人材の育成を検討してみてください。
この記事を書いた人
泉水 ちか
東京都在住のWEBライター。フリーランスで様々なジャンルのライティングをこなす。人のこころに興味があり、心理学・カウンセリングの資格を多数取得。マーケティングにも活かすべく奮闘中。趣味は映画鑑賞(ホラーやアクション!)と温泉・銭湯めぐり。長年、放送業界にいたため音楽に詳しい。運動嫌いのインドア派だが夏フェスは好き。ラーメンと寿司と焼肉があれば大丈夫。
2024.08.08
職場における心理的安全性とは?ぬるま湯組織との違いや要因、メリットを解説
チームづくり企業の成長において、「心理的安全性」の重要度が近年ますます注目されています。 しかし、「心理的安全性とは具体的にどのようなものなのか」「どんなメリットがあるのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか。 今回の記事では、心理的安全性の概念や「ぬるま湯組織」との違いについて解説し、心理的安全性の低下を引き起こす要因や高めることで得られるメリットを紹介します。 心理的安全性を高めたいと思っている企業の担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。 心理的安全性とは 「心理的安全性」とはどのようなものなのか、ここでは概要と「ぬるま湯組織」との違いについて解説します。 心理的安全性の概要 心理的安全性とは、職場において誰もが安心して意見を述べ、行動できる環境を指します。 この概念は1999年にハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱され、Google社が行った「プロジェクトアリストテレス」を通じて広く注目されるようになりました。 心理的安全性の高い組織では、メンバーが失敗を恐れずにリスクを取り、新しいアイデアを提案できます。 また、お互いの意見を尊重し、現状をよりよくするための意見交換を行うことで、イノベーションや生産性の向上につながります。 ぬるま湯組織との違い 心理的安全性は「ぬるま湯組織」とは大きく異なります。 ぬるま湯組織では緊張感が欠如し、成長意欲も低下しがちです。 一方で、心理的安全性の高い組織では、建設的な緊張感と高い成長意欲が保たれています。 コミュニケーションの面でも、ぬるま湯組織ではやりとりが少なく表面的になりやすいのに対し、心理的安全性の高い組織では活発で深い議論が行われる傾向にあります。 また、間違いや意見の対立が発生した場合、ぬるま湯組織ではこれを避けようとする一方、心理的安全性の高い組織では積極的に指摘し、新しいアイデアを生み出す機会だと捉えるのが特徴です。 居心地の良さという観点でも違いがあります。 ぬるま湯組織では常に居心地が良いかもしれません。 しかし、心理的安全性の高い組織では、時に不快な状況も経験しながらそれを成長の糧とします。 つまり、心理的安全性の高い組織は単に「優しい」環境ではなく、個人を尊重しつつ率直に意見を交わし、挑戦と成長を促す環境と言えます。 心理的安全性が低下する4つの要素 心理的安全性が低下するのは、次の4つの要素が原因です。 無知だと思われる不安(Ignorant) 無能だと思われる不安(Incompetent) 邪魔をしていると思われる不安(Intrusive) ネガティブだと思われる不安(Negative) それぞれ解説します。 無知だと思われる不安(Ignorant) 「こんなことも知らないのか」と思われることを心配し、上司や同僚に質問をためらう人も多いのではないでしょうか。 しかし、疑問を解消しないまま進めることで、後々問題が生じる可能性があります。 ミスを引き起こすだけでなく、業務効率や成果、さらには仕事への意欲低下にもつながりかねません。 無能だと思われる不安(Incompetent) 失敗した時に、「能力がない」と周囲から失望されるかもしれないと思う不安です。 この不安によって、自分の過ちを隠蔽したり、他の人に責任を押し付けたりする行動につながることがあります。 こういった行為が常態化すると、組織全体が問題解決の機会を逃し、困難な状況に対処する能力を育成できなくなるという問題が生じます。 邪魔をしていると思われる不安(Intrusive) 「人の邪魔をしているかもしれない」と感じ、意見や提案を控える人も少なくありません。 自分のアイデアが無価値だと思い込んだり、他人の時間を無駄にするのではないかと心配したりするケースもあります。 その不安に駆られて発言を躊躇することで、個人の成長機会を奪うだけでなく、組織全体のイノベーション能力も低下します。 ネガティブだと思われる不安(Negative) 「常に異議を唱える人」や「批判的な人」と見なされる不安から、合理的な根拠があっても反対意見を出しにくくなる場合があります。 しかし、有意義な議論を展開し、問題点を洗い出して改善するには、多様な意見が不可欠です。 「適切な反対意見は、アイデアの質を向上させる」という認識を組織全体で共有する必要があります。 心理的安全性を高めることで得られるメリット 心理的安全性を高めることで得られる主なメリットは、下記の3点です。 経験・知識の交換が活発化する イノベーション促進に役立つ 生産性向上と人材の定着につながる それぞれ解説します。 経験・知識の交換が活発化する 心理的安全性が高まると、チームメンバーが自由に発言できる環境が整います。 これにより、情報交換が活発化し、各メンバーの経験や知識が共有されやすくなるのが大きなメリットです。 結果として、組織全体の知識量が増加し、問題解決能力が向上します。 また、早期の問題発見や対処が可能となり、成果につながりやすくなります。 イノベーション促進に役立つ 心理的安全性の高い職場では、多様な価値観や意見が尊重されます。 異なる視点からの建設的な議論によって従来の固定概念にとらわれない新しいアイデアが生まれ、イノベーション促進に役立ちます。 生産性向上と人材の定着につながる 心理的安全性が確保された環境では、各メンバーが自身の強みを発揮しやすくなり、チーム全体の生産性が向上します。 また、ミスや問題の報告・共有がスムーズになることで、迅速な対応が可能です。 さらに、率直なフィードバックが交わされることで個人の成長が促進され、仕事へのやりがいが生まれます。 これらの要因が相まって、結果的に人材の定着率向上にもつながります。 まとめ 心理的安全性とは、チームの誰もが安心して意見を言えたり、新しいことに挑戦できたりする環境のことです。 心理的安全性の高い組織では、活発な情報交換によってチームの知識と問題解決能力が向上し、多様な意見の尊重がイノベーションを促進します。 また、各メンバーの強みが発揮されやすくなり、生産性の向上と人材の定着にもつながります。 そのためには、無知・無能・邪魔・ネガティブだと思われる不安を取り除き、心理的安全性を育む環境づくりに取り組むことが重要です。 今回の記事を参考にして、心理的安全性について理解しておくことをおすすめします。
2024.12.31
人材マネジメントを取り入れるには?具体的な手法や事例を紹介
チームづくり人材マネジメントは、組織のビジョン達成に向けて人材の管理や活用を行うアプローチです。 導入によって企業にさまざまなメリットがありますが、具体的な手法や事例を知りたいという方も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、人材マネジメントの具体的な手法と2つの事例を取り上げて解説します。 ぜひ、参考にしてみてください。 人材マネジメントの具体的な手法 人材マネジメントの具体的な手法は、下記のとおりです。 課題の把握 必要な人材要件の定義 アクションプランの策定 実行とモニタリング 評価と改善 それぞれ解説します。 1.課題の把握 初めに、組織の成長や発展を妨げている人材面での課題を正確に把握します。 具体的には、営業力の不足による売上の伸び悩みやマネジメント層の不足による組織拡大の限界、従業員の定着率の低さなど、経営に直接影響を及ぼす問題点を特定します。 この段階での課題認識がその後の施策の効果を大きく左右するので、しっかり把握することが重要です。 2.必要な人材要件の定義 課題が明確になったら、その解決に必要な人材像を具体的に描き出します。 求められる能力やスキル、経験値を詳細に定義し、必要な人数も算出しておくとよいです。 また、定着率の向上が課題の場合は、離職の根本的な原因を分析した上で、社内コミュニケーションの改善やキャリア支援制度の構築など、具体的な対策を検討します。 3.アクションプランの策定 人材施策を実現するための具体的なアクションプランを立案します。 採用計画であれば、採用時期や人材要件、採用人数などを設定しましょう。 人材育成においては、研修時期や対象者の選定、教育手法、到達目標などを明確にします。 これらの計画は、関係する部門長や対象となる従業員と共有し、全体の合意を得ることが大切です。 4.実行とモニタリング 策定したアクションプランを着実に実行に移します。 この際、現場任せにするのではなく、経営層も積極的に関与しながら、進捗状況を定期的にチェックする必要があります。 特に初期段階ではきめ細かなモニタリングを行い、計画と実態のずれが生じていないか確認することが重要です。 5.評価と改善 状況と成果を定期的に評価し、目標達成度を測定します。 進捗に遅れが見られる場合や期待される効果が得られていない場合は、その原因を分析し、必要に応じて計画の修正や新たな施策の追加を行います。 より効果的な人材マネジメントのためには、このPDCAサイクルを継続的に回すことが大切です。 人材マネジメントの事例 ここでは、人材マネジメントの事例として、楽天グループ株式会社と株式会社オリエンタルランドの例を紹介します。 楽天グループ株式会社 楽天グループ株式会社では人材マネジメントの改革を推進しており、中でも特に注目される取り組みが「Back to Basics Project」です。 このプロジェクトでは「勝てる人材、勝てるチームを作る」という基本目標を達成するため、次の3つの領域での改善に注力しています。 採用 採用プロセスの見直しや採用ブランディングの強化を行い、より多くの優秀な人材を確保するとともに、採用ランキングの向上を図っています。 この取り組みによって、企業の成長に適した人材が効率的に確保されています。 育成 従業員育成のため、全社的に1on1ミーティングを導入しています。 また、管理職向けのフィードバックスキル向上研修のほか、新たに38の集合型研修プログラムを開発し、90%以上の高い満足度を得ています。 定着 従業員の定着を促すため、評価や報酬制度を刷新し、長期就労者向けの退職金制度も新設されました。 また、在宅勤務制度やフレックス制度など、多様な働き方に対応する仕組みも整備されています。 加えて、「人材育成マップ」を作成し、楽天で積み重ねられるスキルやキャリアを明確化することで、従業員が長期的なキャリアビジョンを描きやすくしています。 従業員の出身国・地域が100を超えるという多様なバックグラウンドを活かし、オープンでイノベーティブな企業文化を醸成しているのも楽天グループの大きな特徴です。 このような取り組みを通じて、従業員が最大限の力を発揮できる環境を提供し、事業の成長を支えています。 参照:楽天グループ株式会社 株式会社オリエンタルランド 東京ディズニーランド・リゾートの運営を手掛ける株式会社オリエンタルランドは、卓越したサービス品質で高い評価を得ている企業です。 同社の優れた顧客満足度の背景には、独自の人材育成制度があります。 特に注目すべきは「ファイブスター・プログラム」という取り組みで、これは従業員(キャスト)の優れた行動を即座に評価・称賛する仕組みになっています。 具体的には、キャストが模範的な行動を示した際に、上司から特別なカードが贈られ、その場で称賛を受けるというものです。 この直接的な評価システムにより、キャストは自身の働きが正当に認められていると実感し、さらなる向上心とやりがいを見出せます。 また、「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」や「サンクスデー」といった制度も導入されており、組織全体で高品質なサービス提供を支える体制が整えられています。 参照:株式会社オリエンタルランド まとめ 人材マネジメントは、組織の持続的な成長と発展に必要なアプローチです。 その実践においては、課題把握から評価・改善までの体系的な方法が重要となります。 楽天グループやオリエンタルランドの事例が示すように、効果的な人材マネジメントは企業の競争力向上と従業員の成長・満足度向上の両立を可能にします。 ぜひ、これらの手法や事例を参考に、人材マネジメントの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
2025.07.22
日本におけるティール組織とは?具体的な国内事例も紹介!
チームづくり従来の階層型組織とは異なる自律・分散・協調型の「ティール組織」は、多くの日本企業が直面している組織課題の解決策として注目されています。 企業担当者の中には、日本国内でこの概念がどのように実践されているか知りたいという方も多いのではないでしょうか。 そこで本記事では、国内企業とティール組織の関係について解説し、実際にティール組織の要素を導入している企業の具体的な取り組み事例をご紹介します。 ぜひ、参考にしてみてください。 ティール組織と国内企業 国内の多くの企業は、階層構造による管理体制と数値目標の達成を重視する「オレンジ組織」の特徴を色濃く持っています。 オレンジ組織は「機械」に例えられることもあり、明確なピラミッド型の階層と役職制度のもとで効率的な成果創出を追求する組織モデルです。 トップダウンによる意思決定システムと部門別の機能分化によって予測可能で統制の取れた運営を実現し、高い目標達成力を発揮してきました。 このような組織モデルで業績を上げてきた企業は多いですが、近年、長時間労働による社員の疲弊や創造性の低下、また変化の激しい市場環境への対応力不足といった課題が深刻化しています。 そのため、働き方改革の推進とともに、より柔軟で自律的な組織運営を目指すティール組織への関心が高まっているのです。 ティール組織では、従来の上下関係に基づく指示命令系統ではなく、社員一人ひとりが自主的に判断し行動することで、組織全体の目的実現を図ります。 また、情報の透明性を重視し、全員が平等に組織の状況を把握できる環境を整えることで、より創造的で持続可能な成長を追求しています。 ティール組織を取り入れている国内企業の具体例 ここからは、ティール組織を取り入れている国内企業の具体例をご紹介します。 オズビジョン社 ポイントサイト「ハピタス」を運営するオズビジョン社は、ティール組織の要素のうちの一つ「ホールネス」を実現した代表的な企業として注目されています。 同社の代表取締役である鈴木氏は、企業は人のために存在するものであり、人が企業のために存在するのではないという基本的な考えのもと、働く真の目的について深く考察しました。 その結果、マズローの欲求5段階説に着目し、現代社会において人々の「自己実現欲求」が高まることを予測したうえで「人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る」という企業理念を掲げました。 そして、この理念を実現するため、社員が全人格をさらけ出して働ける組織づくりに取り組んできたのです。 中でも特に重点的な取り組みが「Thanks day」と「Good or New」という2つの制度です。 「Thanks day」は、希望者が年に1日、誰かに感謝するための特別休暇を取得でき、現金2万円の支給も受けられるという、福利厚生も兼ねた制度でした。 取得者は社内ブログで感謝の対象と内容を共有することが求められ、当初は毎月利用希望者が現れるほど好評だったそうです。 一方「Good or New」は、毎朝5~6人のグループで、メンバーの長所や24時間以内のニュースについて話し合う制度でした。 これらの制度は一時的には社内コミュニケーションの活性化や理念の浸透に効果を発揮しましたが、マンネリ化や義務感の発生といった問題により、最終的には廃止されました。 しかし、こうした施策を通じて企業風土が徐々に変化し、自己実現のために働く社員の割合が向上したことで「ホールネス」の獲得につながったのです。 株式会社ネットプロテクションズ 株式会社ネットプロテクションズは、自律・分散・協調を基盤とするティール型組織の構築により、社員の自己実現と社会発展を目指している企業です。 同社では「Natura」という独自の人事評価制度を導入しており、この制度では半年ごとに全社員が互いに面談と評価を行うことで、相互成長支援と心理的安全性の確保を図っています。 また、従来のマネージャー役職を完全に廃止している点が組織運営の特徴です。 これは、全員がマネージャーとしての機能を果たす必要があるという考えに基づいており、特定の個人に権限や責任が恒久的に集中することを避けています。 その代わり、各部署では「カタリスト」という流動的な役割を設置しています。 カタリストは情報、人材、予算の采配権限を持ちますが、チーム人数の約10パーセント程度が担当し、定期的に交代することが可能です。 重要なのは、カタリストの使命が権限の行使ではなく、最大限の権限移譲と共有にあることです。 さらに、半期ごとに実施されるディベロップメント・サポート面談では、同一機能部署の上位メンバーとのRDS面談や、カタリストとのQDS面談を通じて、業績振り返りやキャリアメンタリングが行われます。 昇格や昇給の決定には、業務をともに行うメンバーによる360度評価を活用し、評価者間での調整を経て最終決定される仕組みが構築されています。 まとめ 日本におけるティール組織の導入事例から、従来の階層型組織からの転換が企業文化全体の変革を伴う挑戦であることがわかります。 今回紹介した2社に共通しているのは、表面的な制度導入ではなく、自社の価値観と深く結びつけながら社員が主体的に働ける環境づくりに継続的に取り組んでいる点です。 国内企業がティール組織への転換を成功させるには、既存の企業文化を尊重しつつ、変化を恐れずに新しい働き方を模索する柔軟性が重要です。 ぜひ、ティール組織の考え方を取り入れながら、より人間らしく創造性豊かな組織運営の実現を目指していきましょう。
ワンネス経営®プログラムは、インナーブランディング強化というアプローチを通して、 お客様企業が求める成果を達成していくという「新しいチームビルディングのプログラム」です。 イメージが持ちづらい点があるかもしれませんが、どうぞお気軽にご質問、ご相談ください。